2010年11月25日木曜日

Book Log: 伝奇集

『砂の本』に味をしめて、ボルヘスの二冊目。
ボルヘスの物語は、現代的な成長、ヒーロー物語のプロットに侵されることなく、正統な文学なので、文学っぽい文章を読みたい人にはすごくおすすめです。



短編集なのですが、一番好きなのは「八岐の園」というストーリーでした。
文章だけでここまで図形的なイメージをひらめかせてくれるものも珍しいなぁ、と。
正確には読んだときというよりも、木の枝を眺めていたときに、ふとその広がり方がこの物語を想起させ、自然物に備わる美との一致を見たことが衝撃的だったのですが。

実は、世界は一つではなく、様々な選択肢の中から選びとられて現在があるという考え方に最近触れて(アメリカのドラマのFRINGEなのですがw)、なるほどなぁ、と思っていたのですが「八岐の園」はその考え(あるいは、世界観の仮説)を小説として、というよりも、非常に端的な表現を通して的確に描いているという点で感服するのです。

2010年11月15日月曜日

Movie Review: ビッグ・フィッシュ

友達にすすめられて、けっこう前から見たいなぁ、と思っていたのですが、近くのレンタルビデオショップの数枚がいつも借りられていたため、念願かなって。

BigFish1

ジョニー・デップと組み始める前の作品で、そこまでシュールな感じじゃなかったですが、彼の作り出すおしゃれでちょっと風刺のきいた世界観は、空想の世界で生きている印象を受けました。
物語の中に、いくつもの物語が織り交ぜられており、現実で起きている息子の葛藤や父の死を引き立たせています。
楽しみながら、最後にほろりと泣ける素敵な映画でした。



音楽にあわせて、ティム・バートンの世界をどうぞ。





一番素敵だと思ったのは、ユアン・マクレガー演じる若かりし頃のエドワード(死にゆく父親)の妻への愛。ロマンチックで、色彩豊か、繊細でラブリー。男の人の率直な愛の表現に思わず笑ってしまいます。

BigFish2

若いころだけでなく、歳を重ねてからの二人のやりとりもまたいいんです。



日常生活を楽しく、彩りあるものとして語りたい人におすすめです。

2010年11月9日火曜日

Movie Review: ローズ・イン・タイドランド


先週末にDVDで鑑賞。





『Dr.パルナサスの鏡』のテリー・ギリアム監督作品ということで、期待して見ただけに、OMG…!!

わけ、わからん…と、絶句してしまいました。

『Dr.パルナサスの鏡』の過去記事

パルナサスもわけわからんは、そうなのですが、こちらは虚構というよりウィヤードな現実のお話で、ついていけませんでした…パラレル・ワールドで虚構の世界があるのはいいけど、そうでない場合は、ただの精神分裂的なものの見方にしかとらえれないという感じです。

最初、主人公のローズの不遇さに引っ張られて、彼女に感情移入してしまったのが間違い。

すごくかわいい子なんだけど、彼女も、いや、彼女が率先して、世界をねじれさせている張本人ですから!!

↓この子!

tideland1

最近のお気に入り映画の『パンズ・ラビリンス』と主人公の精神的な背景や、特徴は似ているのだけど、なんだかしっくりこない。

『パンズ・ラビリンス』の過去記事

でも、しっくりこない感じは、子どもの想像力によって作り出されるパラレルワールドの存在に対する疑問だとか、主人公が想像の世界に浸るきっかけとか、そういうものからくるんではなくて、じゃあ、何かって言うと、単に表現されているヒッピーな感じが好きじゃないんだという、単純な結論に。

パンズ・ラビリンスが嫌いでも、これが好きと言う方は、アングラな感じは嫌いだけど、ヒッピーな感じは好きなんでしょう、きっと。

両方好きな人は、寛容な人だと思います。

2010年11月8日月曜日

Book Log: 神話作用

半年ぐらいかけて、他の本に浮気しながら読み終えた本。
というか、気が乗らないときには読み進められないです。




バルトのエッセイと、そのエッセイのものの見方をまとめた本という感じ。

エッセイを書いたり、自分の生きる社会を風刺するベースになるような、視点を得るにはいい本かもしれないです。

ちなみに、神話って言葉がどういう認知をされているのかいまいち分からないのだけど、この神話キャンベルの言う神話や物語のプロットとして解説される神話の流れとはちょっと違って、社会の現象からいかに神話を読みとるかという話が言語学・記号学の観点からまとめられたもの。

バルトの言う神話とは、つまりその言葉(言葉が表わす内容も含めて)が何を表現しているか、ということで、その解説とさらにその神話が社会においてどんな地位を占めているのか、あるいは占めていないのかが書かれています。



ところで、この本、めっちゃ読みにくい!!!

(その印象ばかりが残った…

途中で、記号論の入門書的なものもかじってみたけれど、その難しさ以上に翻訳が読みにくいのか、フランス語特有の翻訳の難しさなのか、バルトの書き方が悪いのか…

大学受験のときにフランス語を読んで、訳して、どうやら構文のとり方はあっているのに、自分の書いた日本語がどうしてもそれ以上解釈できないというときの感覚を思い出しました…って、プロの翻訳家の人に失礼かもですが…



記号論に興味のない人は、神話に興味があっても、読まなくていいと思います。
個人的には、もう一回読むかなぁ、、、多分、あと数回は、開くかなぁ。

2010年11月7日日曜日

Webサービスで、久々に感動した。『Qwiki』


仕事柄、広義の検索エンジンに関する情報に関してけっこうアンテナを張っている方なのですが、数週間前から招待制でβ版を使えるようになったサービスで、感動したものがあったのでご紹介。

私なんかは、もともとITとか「イット」と読んでいるぐらいのリテラシー感で大学に入った文系女子で、いわゆるテクノロジー好きではないので、技術的な先進性とか、誰々(中の人)が、こんな工夫をしてるんだ!的なトリビア的な内輪話もなく、ライフハック的なものもツールとしてしか捉えないので、ただただ、サービスとして完成度の高いものにしか心動かされない(それも、社会に存在するあらゆるサービス、ディズニーランドとかと比較してね)のですが、今回はかなり感動したので、ご紹介。

※英語での表示しかありませんが、リスニングの勉強にもなるかもしれないので、見てみてください。

そのサービスとは、Qwikiです!!!

これ、ほんとすごいくて、見たときに感動したんです。

名前の通り、wikipediaをベースにしていて、人の名前やモニュメントなどで検索ができるのですが、その表示方法が従来のWebサービスを凌駕しているんです。

ジョージ・クルーニーだと、こんな風に表示されます。※音出ます!

http://www.qwiki.com/q/#George_Clooney

おもしろい、と思った人は、タージ・マハルもどうぞ。※音出ます!

http://www.qwiki.com/q/#Taj_Mahal

表示されている画像のセンスもいいし、読み上げまでしてくれます。

今度は画像で、見ていきます。

私の好きなリリー・コールだと、こんな感じ。

Qwiki1

彼女の生年月日と年齢を図式化してくれたり、

Qwiki2

この水色の文字に関連する画像が表示されるようです。

で、ハイライトされる画像が文章にあわせて右に流れていくんです。







普段からGoogleやYahoo!などの検索エンジンを使っている私たちは、おそらく必要な情報を検索して、最近では、左側のナビゲーションで画像検索や動画検索に切り替えたりする方法を知っているけれど、誰もがそういう検索ができるわけじゃないですよね。

小学生とか、おじいちゃんおばあちゃんとか。

これなら、キーワードを一つ入力するだけで、キーワードに適した画像を表示してくれるだけでなく、精度よく関連性のあるものを簡単にみつけることができるので、現代人特有の検索リテラシーがなくても、いろんなことを知れる機会が増えると思いませんか。

うーん、素敵だ。







ところで、なんでこんなにクールなサービスのアイディアがどうやって生まれたんだろう?とチームメンバーを見てみると、トップの人はどうやら、もとTVプロデューサーなんですね。

おぉ!確かに、流れる画像や音声との融合は、とってもテレビ的。

あと、調べるのにQwikiが必要なわけではないけれど、手軽に楽しく調べられる、っていうことでなんとなく開いてしまうことが多くなりそう。

無料動画の流れでテレビがおされるという話や、書籍の電子化によって出版社がやばいという話は聞くけれど、そこで培った感性とかものの見せ方に関するテクニックとかは、活かし方が存分にあるんじゃないか、という示唆もくれた最近マイブームのWebサービスでした。

『薔薇の名前』

最近、ブログをあまり更新していないわけだけど、ずいぶん長いことかけて『薔薇の名前』という本を読み終えて、ついでに映画を見たのでちょっとレビュー。







分厚い単行本二冊に渡るウンベルト・エーコの小説と映画を比べること自体ナンセンスなのですが、映画は見なくてもよかったかなぁ、と。





ところで、薔薇の名前を読み切るまでにかかった時間、何度も手にしては数十ページで挫折・・・というのを考えると、数年。

今年の後半になってやっと読み進められるようになって2カ月ぐらいがかかったと思うのですが、そんだけ厚みのある本をたかだか2時間程度の映画にまとめるなんて無理なんですよ。

いくら文字メディアより映像の方が情報量が多いとは言え、時代背景、推理ための伏線をあんだけ削ってしまってはもはや原作の価値は5%程度。

あと、ショーン・コネリー以外の役者が、あまりかっこよくない上に托鉢修道会の話なので、どうしようも救いようのない感じのヘアスタイルに…

DVDお貸しします。借りパクOKです!笑

* * *

原作の『薔薇の名前』は、最高級のサスペンス、ミステリー小説。

世界史で有名な異端派の宗教裁判や魔女狩りの頃の修道院を舞台にした、ミステリーで、これらの時代背景もストーリーに盛り込まれているのはもちろんのこと、推理小説としても楽しめる絶品です。

ダン・ブラウンのダヴィンチコードなどが好きな方は、絶対いけると思います。

時間かかるけど、ぜひ読んで欲しいです。

いや、まぁ、読み切れる人にだけ、この小説の練りに練られたプロットや構成、張り巡らされた伏線の複雑さが解きほぐされていく感動を味わって欲しい!







個人的に、『薔薇の名前』の中で心に残ったのはこの言葉。

“わたしは記号の真実性を疑ったことはないよ、アドソ。人間がこの世界で自分の位置を定めるための手掛かりは、これしかないのだから。”

※推理が終わったあとの言葉しか、もはや頭に入ってきていいない・・・。

エーコの世界観がよく現れている!!



ちなみに、次はウンベルト・エーコの『完全言語の探求』を読もうか、どうか迷い中。もう買ってしまったので、いつかは読むと思うんだけど、記号論の話は難解なので、ビビっているところです。