タイトル:魔術的リアリズム ― 二〇世紀のラテンアメリカ小説(水声社)
作者:寺尾 隆吉
莫言氏のノーベル文学賞の受賞と個人的な2012年のマルケス全集読破の目標のため非常にタイムリー!と思って手にした本。
そもそも魔術的リアリズムって何?という方の方が多いと思いますので、先に定義的な本からの抜粋で要約しておきます。
魔術的リアリズム(マジックリアリズム)の手法には二段階あり…、
「正常」とされる日常的視点を離れて、「異常」・「非日常的」視点から現実世界を捉え直すことにある。
さらに、
非日常的観点を個人レベルにとどめるのでなく、それを集団レベルに拡大し、一つの「共同体」を構築するところにある。
とされています。また、
そして、魔術的リアリズムの作家たちは、現実世界を別の角度から照射することでその欠陥を浮かび上がらせ、そこから間接的に社会変革に寄与しようとする。
とあります。
マルケスを読んだ時に感じる、現実離れしているイベントが起こるのに現実味があり、真実味を帯びた物語になっている秘密はここにあったのかぁ、と納得。
ただし、単に現実とファンタジーを織り交ぜたなんちゃって魔術的リアリズムが昨今は横行しており、1960年代、70年代のブーム後は娯楽小説のために表面的に取り入れられた作品も多いと、筆者は指摘しています。
確かに、娯楽のために不思議な要素を入れるのと社会の問題の暴露や、戦争や独裁の時代背景からくる個人の強烈な体験を昇華させる小説ではその質に大きな違いがあるのは、魔術的リアリズム的作風によらず別物として捉えるべきだと私も思っています。
また、個人的に非常に納得させられたのは、ラテンアメリカ文学の質の高さに関して。
当時の文盲率の高さ故、高等教育文学部設置の流れからの知識人すなわち読者の図式故に難解なものほど好まれた時代背景に依って、ラテンアメリカ文学が簡単な娯楽として発展しなかったことが大きかったとのこと。
当時の文盲率の高さ故、高等教育文学部設置の流れからの知識人すなわち読者の図式故に難解なものほど好まれた時代背景に依って、ラテンアメリカ文学が簡単な娯楽として発展しなかったことが大きかったとのこと。
ここ数年ラ米の文学を読んで(日本語に訳されているのでその時点で厳選されたものばかりなのですが)、どれもこれもおもしろい!おもしろい!と驚愕していたその理由がわかって嬉しかった次第です。
一つの文学ジャンルを研究対象とした本をほとんど読んだことがなかったので、非常に勉強になりました。
魔術的リアリズムに興味を持った方は、ぜひ『百年の孤独』から。オススメします。
魔術的リアリズムに興味を持った方は、ぜひ『百年の孤独』から。オススメします。
