2013年8月5日月曜日

Movie Review: 風立ちぬ



ジブリの最新作の『風立ちぬ』。そもそもあまり興味なかったのだけれど、周りの人の評判がいいのと、堀辰雄氏の同名の小説(部分的に映画の原作にもなっている)を読んだところなかなかに好きな小説だったので、映画館に足を運んできました。

結論から言うと、自分の中では大人向けの映画なのではないか、という印象であまり楽しむことができませんでした。途中で飽きてしまった…。映画館なのにそわそわして、周りの人ゴメンナサイ。

その映像の美しさやストーリー、キャラクターの描き方など文句のつけようもない完成度だと思うのですが、宮崎駿監督の作品では割りとファンタジーよりのものが好きなのと(それゆえ、予告を見た段階では行くつもりはなかったわけですが)、飛行機の美しさや設計思想への愛情というか執着への理解がほとんどできず、最後まで主人公の堀越二郎氏への感情移入に苦労したのが飽きてしまった理由かな、と。もっと分かりやすい芸術作品などの製作者の話だったら理解できたのかもしれないし、そもそも私の中に神がかり的なクリエイター気質がないために理解しえない映画だったのかもしれないし、それについては自分でも分かりかねるという中途半端な気分です。

また、主人公の葛藤、これは宮崎駿監督の葛藤そのものでもあると思ったのですが、この葛藤が葛藤のまま描かれていたのが、苦手な作品に分類してしまった理由なのかもしれないとも考えています。もう少しわかりやすく言うと、文学や映画の作品に、人のどうしようもなさを、最終的には受け入れて生きていくという人への愛のある文学や映画が好きなタイプなので(例を出すとすれば、最近見た映画では、ギャッツビーというイタイ男のお話は最高に好きだったりとか)、その愛の薄さが合わなかったのです。もしかしたら、宮崎監督なりの愛情が示されていたのかもしれないのですが、私の読解が追いつきませんでした。

ただ、この葛藤を映画のメッセージとして素直に解釈するのであれば、宮崎駿監督が美しく描き出している日本の世界のものづくりに対する渇望的な思いや自分のはかない生を一人の天才に捧げる精神、魂を込めて作ったものが自分の意図と分離して利用されていく作品への肯定、これら全てに監督自身が必ずしも同意していないという思いが込められているのではないかと考えています。

手放しの日本人への称賛がこの映画で起きるとすれば、それはまさに宮崎駿監督の葛藤をより深いものにするのではないか、と思っています。

* * *

作り手としての時間は10年しかない的なカプローニのセリフがありましたが、とすると宮崎監督自身が自分のことをどう捉えているのかがとても気になりましたが、少なくとも今回の映画では、二郎とカプローニの夢のイメージには大変感銘を受けたことは書き添えたいと思います。

それから、映画の中で何度か繰り返された、「ルヴァンスレーヴ、イルフォタンテドゥヴィーヴフ」、ヴァレリーの詩の最後の一節を引用したいと思います(原文はここを参考にしました)。
Le vent se lève! . . . il faut tenter de vivre! 
L'air immense ouvre et referme mon livre, 
La vague en poudre ose jaillir des rocs! 
Envolez-vous, pages tout éblouies! 
Rompez, vagues! Rompez d'eaux réjouies 
Ce toit tranquille où picoraient des focs!
                               - Paul Valery, Le cimetière marin

    (意訳)
    風が吹いた...生きようとしなければいけない!
    大きな風が本のページをはためかす。
    波は砕け、岩を打ち砕こうとしているではないか。
    魅惑的な本を読むのはよそう!
    さあ、喜び踊る波で、打ち砕こう。
    三角の帆が揺れる、静かな屋根を。