2017年12月3日日曜日

Book & Film Log『あなたの人生の物語』『メッセージ』

レイノルズは、わたしが照覧したあの美を見いだしてはいない。すばらしい洞察に迫っていながら、それに気がついていない。彼に霊感を与える唯一のゲシュタルトは、わたしが無視したもの、惑星社会の、その生物圏のそれだ。わたしは美を愛し、彼は人類を愛する。どちらも、相手は尊い機会を無視していると感じている。  
ー「理解」テッド・チャン『あなたの人生の物語』  
短編集自体を読み終えたのは、映画より後だったけれど原作の短編は先に読んでいたという経緯。

テッド・チャンの最後の構想ノートを見ても分かるように、どうやら理系出身(ブラウン大学では当初、物理学とコンピュータ科学を学んでいたが、最終的にコンピュータ科学に絞り1989年に卒業する。- Wikipedia)の方のようで、アイディアがとてもおもしろい。もちろん、その一粒か二粒のアイディアをお話に仕立てていくスキルもとても高い。

近年のSFとしてありがちな、ディストピア的なものとはひと味違うのでSFって、核で滅んだとか人工知能に計算されまくった未来で人間が奮闘する話か異世界のことでしょ、と思っている方に手にとっていただきたい本です。

映画の方は、SFっぽさよりもしっとりゆったり落ち着いたヒューマンドラマ的な気分のときにおすすめしたいです。女の子が出てきて、出産した身としては、もうそれだけで泣けました。

北京の798芸術区と交通事情

※2015年の夏頃に北京に行ったときの記録が下書きになっていたので、今さらアップします。ギャラリーの展示内容はもちろんカフェやタクシー事情など多いに変わっていると思いますので、その辺りは旅の思い出話的に読んでください。

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少し前に北京に行ってきました。北京の王道観光以外に現代アート好きとして外せないと思ったのが798芸術区。地図で見ると、空港と市内の間ぐらいの位置にあったので市内に出る前に行ってみました。



798芸術区、けっこう広くで最後まで全景を把握できていませんでした。A~Eの区画の中で私はどうやらC~Eの区画しかうろうろしていなかったようです。ラッシュ前にホテルに行ってしまいたかったり、空気が悪いせいか目がしぱしぱしてきたなどの理由で2~3時間程度の滞在でしたが、コンテンツ的には十分に満足しました。

ひとまず、路地をだらだら歩いてみます。



こんなのが置いてあったり、



これなんかはただの落書きに見えますね。

歩いていると事前リサーチで名前を知っていたUCCA(割と大きめのギャラリー?)を発見したので、行ってみることに。

やっていたのはWilliam Kentridge展。明らかに中国アート関係なさそうだけど、入ってみました。入場料もかかりました。いくらかは忘れました。学生さんなら無料みたいです。



うん、やっぱり中国っぽくないですが、展示はそれなりにおもしろかったです。



ここの展示で気になったのが、学芸員ならぬ警備員の人たち。一つのエリア(テーマごと)ぐらいに一人ぐらいの割合でいました。とにかく、多い。大体男の人で、黒いズボンに白いシャツ。三人ぐらいで固まって携帯見ながら話したりしてました。日本との違い!驚

ギャラリーは大抵無料なので、片っ端から入ってみましたが、798芸術地区という場所自体がとてもおもしろくてフォトジェニックに感じられました。



配管と広告とオブジェ。配管からは実際に白い蒸気が出ていたので、稼働している模様。



明らかに右のおじさん崩壊しています。隣のゴミ置き場と相まって、アートなのか廃棄物なのか分かりません。



なんだか分からないけど、錆び付いた柱。こんな場所は日本にはなさそう。



思わず写真を撮りたくなってしまったアートでもなんでもないもの。中国だとありきたりの風景なのでしょうか?

それから、印象に残っているのAi Weiweiの展示。日本でも数年前に森美術館で単独の展示会が開催されていた記憶があります。

798で展示されていたのは古い建物を再利用したプロジェクトで、二つのギャラリーにまたがって展示されていました。



こちらのギャラリーでは、この屋根の部分と同じ高さまで上がって概観することができます。三階分の高さです。



踊り場に無造作に立てかけられていました。全て古い建物を再利用したプロジェクトのよう。



もう一つのギャラリーでは、骨組みの中に入り込むことができました。屋根裏の散策のようでなんだか楽しかったです。

さすがに世界的なアーティストだけあって、コンセプトがあるプロジェクトだということが素人の私にでも伝わってきます。これを見られただけでも798に来てよかったと思える展示でした。

こちらの展示については、The New York Timesで紹介があったので併せて紹介しておきます。
>> Ai Weiwei Trades Politics for Subtlety in First Solo Exhibition in China

* * *

正直に言うと、ギャラリーは玉石混淆。10軒見て、1~2軒ほどおもしろいと思える作品、作家に出会えるかな?と言った感じです。それでも、こんな風にギャラリーやオブジェが密集している場所を歩くのはなかなか楽しい経験でした。

翌日には天安門と故宮周辺の観光に行きましたが、個人的にはこちらの地区の方が楽しめました。アートが好きなら、ぜひおすすめしたい北京の観光地です。

その他印象に残った作家さんをメモしておきます。

 Asia Art Centerの漱石枕流という展示で。

史金淞 / Shi Jinsong: 金の松のオブジェが迫力ありました。
劉丹 / Liu Dan: 文字と静謐な感じの絵の組み合わせがかっこいい。

ギャラリー不明。

詹瀅 / Zhan Ying: 金のお釈迦様の絵が素敵でした。買い手ついてました。

どこのギャラリーも写真大体OKでしたが、残念ながら上記の展示では写真NGでした。一応、作家さんの意向もあるのだろうと思って、私は撮りませんでしたが、他の人はけっこう写真撮ってました。しかも、必ず自分を入れてました。ギャラリーの人も大半は気にしてないって感じでした。たまに、きちんと仕事してる警備員さんもいるのでその辺は臨機応変に…。

798芸術区のカフェ


途中休憩やランチで2軒のカフェに入りました。どちらも、適当に入ったのですがwi-fiはありました。パスワードは店員さんに訊いたり、その辺に書いてあったり。

ただし、ホテルのwi-fiもつながりにくかったので、カフェのwi-fiも100%ではないと思っていたほうがよさそうです。この地区にあったat cafeというところでは中国滞在中、一番の快適さでwi-fiにつながりました。



at Cafeの中の壁。

多分、中国ではお高めの価格設定ですが、普通の洋風サンドイッチやジュースが飲めます!味はかなり普通です!!

それと、地区内には公衆トイレがぽつぽつあるのですが、混んでいるし臭いのでカフェなどで貸してもらうのがよさそうです。

798芸術区とタクシー


798芸術区に行くには市内からでもメトロだけでは無理なので、タクシーかバスが必要みたいです。バスに一人で乗る自信はなかったので行きは空港の正規のタクシー乗り場からタクシーで。

ちなみに、中国語は数字を3秒遅れぐらいで理解するほかには「ありがとう」、「こんにちは」、「日本人」ぐらいしか分からなかったので、失礼とは思いつつ行き先を書いた紙をタクシー運転士さんの前に突き出すという方法で数日間を乗り切りました。

空港で最初に乗ったタクシーのあんちゃん(本当に若い兄ちゃんでした)は場所が分からなかったらしく、空港出てすぐの人通りの少ない道で知り合いの車に乗り換えることになりました。言葉が通じなくて、何してるんだろう?と内心てんぱりましたが悪い人じゃなさそうなので適当に任せておきました。そして、やってきた先輩っぽい人のタクシーに乗り換え。

798芸術地区はタクシーの運転手さんでも分かる人も分からない人もいるぐらいのまぁまぁの知名度のようです。空港からは車で15分ぐらいかな?

芸術区は一応ゲートみたいなのがあって、出入りしている車が管理されているようでした。歩いているのは高校〜大学生ぐらいの若者がメインで、中国からの観光という感じの人もおおかったです。一眼とか普通に持ち歩いている風景が普通で、SONYのNEXを首から下げてても特にじろじろ見られませんでした(故宮やオリンピック公園ではめっちゃ見られた)。

どこに何があるのか不明なので、とりあえずゲート入ってすぐに降ろしてもらいました。降りたときに(多分)帰りのタクシーはどこで拾えるかみたいなことを車に地図的なことを書きながら教えてくれいたのだがいかんせん分からない…。分からないことも伝えられない…。どうやら、中国人に見た目が似ているらしいので中国語を解せないとは思ってもらえず何度も何度も説明してくれるので、埒があかなくて、つい分かった素振りでOKと言ってしまった…。

問題は帰り。帰りもタクシーでホテルまで行く予定でしたが、タクシーつかまらないかも、とか、すごい値段ふっかけられたらどうしようとか、いろいろ心配。

タクシーは割と捕まえやすくなっていると事前にブログなどを読みあさって知っていたのですが、乗車拒否されたりして心が折れたりしたときのためにUberにも登録しておきました。Uberはタクシーをスマホのアプリで呼ぶことのできるサービスで、事前に金額が分かる、走っている場所が分かるというような安心をウリにしたサービスです。日本で事前に登録しておきました。

途中休憩で入ったカフェでUberのアプリ開いたら、地区内に4~5台のUber車がうようよ動いていたのでUberでも帰れたと思います。Uberのプロモーションコード(ココカラ登録で2,000円分ゲットできます)もあったので、使ってみたかったのですが、帰り際に入ったカフェでWi-fiが機能していない&ローミングが使えなかった(iPhone個体の問題?)ので、結局その辺を走っているタクシーで帰ることになりました。芸術区各所にあるゲートのそばだと捕まえやすいかも?

中国のタクシーはぼったくられるとどんなガイドにも書いてあってビビっていたのですが、三日間乗ったタクシーでメーター以外の変な請求のされ方などもなかったし、おぼろげに頭にたたき込んでいた通りの名前と道々の標識などを照らし合わせていた結果、特に遠回りしてる人とかもいなかったです。中国タクシーにはぼられる神話が自分の中で崩壊ヽ(´ー`)ノ

ただし英語は驚くほど何も通じないので、行き先を書いた紙は必携です。もちろん、中国語、簡体字で!

まとめ


798芸術区、ぜひ北京観光に組み込んでください!楽しいです!

2017年11月30日木曜日

横浜トリエンナーレ 2017

おそらく二回目の開催から欠かさずに行っている横浜トリエンナーレ。涼しくなったら行こう〜と思っていたらいつの間にか会期が一週間を切っていたところで急いで行ってきました。

会場はメインだけで3つに分かれているのですが、あまりにもぎりぎりに気がついたため、行けたのは横浜美術館だけ。悲しい。


会期中の横浜美術館の外観はこんな感じでした。入口脇のライフガードや壁に一番目立つゴムボートはアイ・ウェイウェイの作品。

以下、写真に収めたものをメモ。


↑ブルームバーグ&チャナリン/Broomberg & Chanarinの作品。 「帰還」だったかな。気になったアーティストの Instagramをフォローできるようになったのも、3年前からの変化って感じがする。



↑この2枚は、サム・デュラント/Sam Durantの作品。


↑マニラのマーク・フスティニアーニ/Mark Justiniani。見ていると不思議な感じに。奥行きを感じるけど、実際にはそんなに長くないのかな?時間的に駆け足過ぎてちょっとよく見られなかったのが残念。



↑ 中国のアーティストザオ・ザオ/赵赵/Zhao Zhaoの作品。高級ブランドのスーツを見た母親が、これなら私も作れる、と作ったものだそう。

中国の現代アートってとてもおもしろい。北京の798芸術区のことがブログの下書きに入ったままなのをみつけたので後ほどアップ予定。

以下は、このトリエンナーレに向けての現代著名人たちのコンセプト的なもののエリアからのピックアップ。




30分ほどしか見てないので、すごくざっくりのメモでした。

今、このブログエントリーのために冊子を見返していたら意外と記憶に残っているものが多かったので、いい作品が多かったのかもしれません。

2017年5月14日日曜日

Book Log: N女の研究


本屋さんで平積みにされていた「N女の研究」をみつけたのが2月頃。「N女」=「NPOで働く女子」のテーマとインパラの朝の中村安希さんの著作であることも相まって瞬発的に買ってあったのを本棚でみつけて昨日今日と読んでみました。結果としてしばらくの積ん読期間を経て、育休明けにこの本を読むのが自分にはいいタイミングだったように思います。

学生の頃に非営利組織の経営の勉強をしていたりとか、自分もNPOでインターンをしていたので、ぶっちゃっけ給料低い(学生インターンならなおさら)とか、各人に割り当てられる仕事との量が半端ないという現状などは、読みながら始終頭を縦に振っていたのですが、女性の転機(結婚や出産)とNPOでのキャリアがとても密接な関係にあること、給与の低いNPO業界で働くには安定した夫の収入があってこそ、という、共働きとか男女平等とかきれいごとではすまされない現代社会の「働く」ということがNPO業界で働く女性へのインタビューから浮き彫りにされていて、とても興味深かったです。

もちろん、NPOで働きたいけど家族がいてそれが叶わない男性ややはり仕事のやりがいよりも収入を優先しなければならない共働き家庭の人からしてみたら、お金の心配の少ないN女って好きなことできていいよね、なわけなのですが、現代のN女が高学歴なのが同等かそれ以上に高学歴で稼ぐ力のある夫がいるから成り立っている部分もあることを考えると、N女の存在は規模は小さいものの現代版ノブレスオブリージュだったりするのかもしれません。

一方で社会課題に向き合う彼ら彼女らも、社会的な弱者になる可能性もゼロではありません。誰もが将来の見通しが不透明な中で生きていく現代社会では、著者が最後にN女の研究を通して提示した4つの多様化する社会で「敵対」から「寛容」へ向かうヒントは、社会という場所にいる一人ひとりが生きやすくなるためにとても重要なものに思えます。

1. 目の前の問題を自己犠牲によって解決しようとしない
2. 自己主張による問題の社会化を図る
3. 人は自分と違うという事実を受け止める
4. 立場の違いを越えて利害の異なる誰かのために戦う

インタビューとは別にその合間に進行する中村さん自身の友人のNPOへの就職から離職までの話も印象に残りました。NPOで働いていますと正面切って言ったり、NPOでのキャリアとして全面に押し出してはいないけれど、自分の興味のある問題意識に関われるならという理由で就職してみたという女性は意外に多いのかも知れないな、と。

NPOへの就職はまだまだマイナーだし、結婚、出産を機に、あるいは何か思うところがあってキャリアチェンジを試みたことで傍から見れば血迷っていると思われるようなキャリア選択をする女性って意外と実際の友人レベルでもいるのですが(自分もまた機会があればNPOに関わりたいと思っている一人だし)、自分が納得するためにいろいろなことを試していくような空気を読めない感じや必死感を湛える人を決して後ろ指指して笑ったりせずに、その健闘を称えられるような社会になればいいな、と改めて思ったのでした。