2012年2月14日火曜日

Book Review: わが悲しき娼婦たちの思い出

タイトル:わが悲しき娼婦たちの思い出(新潮社)
作者:ガブリエル・ガルシア=マルケス(Wikipedia
訳者:木村 榮一

ラテン・アメリカ文学の大御所ガルシア=マルケスの小説の中で比較的最近に書かれたもので、77歳の著者が、90歳の男の恋の話を書いた作品。新潮社のガルシア=マルケス全集の中では最も短いものと思われ、一時間程度で読み終えることができました。

90歳のおじいさんの物語と聞けば、どんなに耄碌としたお話が展開されるのか、、、と思いきや、「私」の語り口は、コミカルで、そして、心の機微がとっても瑞々しい。それだけでなく、主人公は、「満九十歳の誕生日に、うら若い処女を狂ったように愛して、自分の誕生祝いにしようと考え」たことで、実際にそれを実行し、かつてないほどに人の心を開いて生き生きと生活しているのが伝わってきます。深刻な死への想像すらも読者にとってはほほえましく見えてしまうのです。

90歳でもこんなにものを考えることができるとしたら、こんなにも誰かに恋焦がれることができるとしたら、老いることへの昨今のイメージは何かステレオタイプ的にネガティブになりすぎているんじゃないかと思える作品。何歳になっても恋心は人を若返らせてくれるものなんですね。