モレルの発明 (水声社)
アドルフォ ビオイ=カサーレス 著
清水 徹, 牛島 信明 訳
こういう本に出会うために私は本を読み続けているのだと思わせてくれる素晴らしい本。読み終わって、思わずふぁ〜と声が出てしまったので、家で読み終えてよかった。
著者カサーレスと親交があるかの有名なボルヘスは、この小説の構想についても議論したと序文で書いており、彼が「完璧な小説」と謳っているのはセールストーク?と最初は疑っていましたが、読み終えて感動せずにはいられないこの感じはこの本の小説としての完成度の高さ故でしょう。
物語は「私」の手記を読み進める形で進行していく。ある廃墟となった無人島に逃げた私が、そこで楽しげに過ごす人々に遭遇し、そのうちの一人の女性に恋をしてしまう。しかし、彼らの秘密、あるいは真実に近づいた私は…。
途中、SFなのかなとも思うのだけど、その枠に留まらず哲学的かつ幻惑的で、「私」の切羽詰まってはいるがとらえどころのない想い(あるいは、向かう先のない想い)の強さが胸が詰まるような儚い美しさを描いているのがたまらなく素晴らしい。
この本を読んでしばらく他の本に手がつかなかった…文学が好きな方にはぜひ読んでいただきたい本です。
※作中の文章を引用すると、ネタバレになる可能性が高いので今回は表紙の写真のみにしました。
表紙に使われている写真は、「ピアノチューナー・オブ・アースクエイク」という映画のワンシーンのようです。内容からすると男の人はもうちょっとぼろい服を着ていると思うのですが、雰囲気自体はも小説にとてもマッチしている印象。
「モレルの発明」の実際の映画の方はこんな感じでした。納得。
残念ながらDVDなどで流通はしていないようですが、Morel's Invention で検索するとDailymotionで英語字幕の映画を見ることが出来ます。全編通して言葉少なく撮られていること、役者さんの美しさが小説の世界観をよく再現しているように思いました。
また、「去年マリエンバート」でという映画は、モレルの発明にインスパイアされているということで探していたら、どうやら4Kデジタル修復版が発売になるようですので、あわせてぜひ。(私は予約してしまいました…。)
こちらがその予告編でしょうか?美しい…。

