2014年9月10日水曜日

Book Review: 盆栽 / 木々の私生活


タイトル:盆栽/木々の私生活(白水社 EXLIBRIS)
作者:アレハンドロ・サンブラ(Web
訳者:松本 健二

盆栽の世話をすることはものを書くことに似ている、とフリオは考える。ものを書くことは盆栽の世話をすることに似ている、とフリオは考える。

本屋になくてもAmazonには本は大抵あって、その逆はほとんど成り立たないと分かっていても、本屋に行くのは私にとっては大事な習慣になっていて、それは、本を買うためでもあるし、アイディアを思いつくためではないが、本を探すためではある。大抵は、海外文学の棚の前にしばらく立って新刊既刊本問わず端からチェックしていく。

ラテンアメリカ文学のコーナーで表紙とタイトルを見て、正直どうかな〜、と思ったこの本。盆栽なんて、日本趣味をかじったラテンアメリカの作家がアーティストぶるにはちょうどいい題材のように感じたからなのだけど、帯に書かれた〈ポスト・ボラーニョ〉に惹かれて読んでみることに。結果的には特に日本趣味的な感じではなく、普通におもしろかった。

この本に収録されている「盆栽」と「木々の私生活は」もとは別々に出版されているらしいのだけれど、主人公フリオと主人公フリアンがそれぞれ恋仲にあった女性との別れを体験する人生のある瞬間が切り取られた物語。回想や、周囲の人の話にとあちこちに言及しながら次第に物語の輪郭が分かってくる。直線的な物語ではないけれど、難解ではない。

特筆すべきなのは、シンプルな文体で、ミニマリズムと呼ばれているらしい。ミニマリズム文学って初めて読んだような気がする。とても現代的な文章という印象。ミニマルだけど、繰り返しも使われていたりしてリズミカル。

ミニマリズムを代表する作家として1980年代に活躍したレイモンド・カーヴァーなども有名だというので、村上春樹の訳した短編をいくつか読んでみたけれど、サンブラさんの文体はカーヴァーのとも少し違う感じ。

個人的な好き嫌いも大いに関係すると思うのだけど、サンブラさんが書いてみせたミニマリズムの文体はいくつも作品を重ねて書いて行くには物足りなくなってきてしまうのではないか、という印象。でも、商業的にこういう文体が流行ることはありそう。

ミニマルな文体って、極めれば悟りの境地みたいになるのかしら...。どうなんだろう?

ちなみに、トップの写真は「盆栽」の挿絵。サンブラさんのホームページを見たところチリ版(?)「盆栽」ではこの絵が表紙になっていました。